安心・安全なニューボーンフォトについて
01◆日本人の気質に合ったニューボーンフォトの推奨
ヨーロッパやアメリカでは、家族や友人に「バースアナウンスメント」と呼ばれる、生まれたばかりの赤ちゃんの写真を付けた出産報告カードを送る習慣があります。この習慣から生まれた記念写真が、ニューボーンフォトです。
ニューボーンとは新生児のことです。新生児は生後28日未満の赤ちゃんのことを言います。
この時期の赤ちゃんは、想像以上に未熟で繊細です。
ママのお腹の中での生活から、環境は大きく変化していて、それに適応しようと必死に過ごしている時期でもあります。大切にお世話をする時期です。
ニューボーンフォトは、海外のカメラマンによって、芸術性を求めるものに形を変えていきました。
中には、赤ちゃんが自ら出来ない、不自然なポーズでの撮影が行われています。
日本でも海外のカメラマンに習って、これらの不自然なポーズでの撮影も行われています。
カメラマンは撮影のプロですが、日本人の赤ちゃんの心と体についての正しい知識を持っている人は、まだまだ少ないのです。
日本人の生まれつきの気質は欧米人と比べて、不安になりやすいDNAを持つ人が多いと言われています。
日本人の子どもはストレスを感じやすいにも関わらず、我慢をしてしまうのです。
生まれたばかりの新生児に、ストレスを内に溜めてしまうような事をしてはいけないと考えています。
泣いていなければ大丈夫、と安易に判断することは間違っているのです。
ニューボーンフォト撮影中も、赤ちゃんには無理をさせないことがとても大切なのです。
日本でのニューボーンフォト件数は、私がこの撮影を始めた2017年に比べて、2020年にはなんと約25倍に増えたというデータがあります。新生児期の貴重な姿を写真に残し、生まれた感動をカタチにしておきたいと思う方が増えています。
出産を頑張ったママへのご褒美に、育児を頑張るママの応援にと、人気上昇中です。
私が目指すニューボーンフォトは、Mini me memory と名付けました。
ちいさなわたしの思い出。
赤ちゃんの心と体に負担をかけない。
赤ちゃんにとっても、産後のママにとっても、優しい楽しい思い出になるように配慮した撮影を実践し、後進の育成も行っています。
02◆ニューボーンフォトの価値とは
新生児の時期は、あっという間に過ぎていきます。
パパもママも新しい家族を迎えて忙しい毎日。
出産は命がけ。大役を果たしたママは、体だけでなく心にも大きな変化が生じています。
生活リズムも定まらず、寝不足になり、育児にふと不安になったり。
そんな時に、写真を見て思い出してほしいです。
ニューボーンフォトは育児中のママの “ココロに寄り添うもの“ と考えています。
『私から育って生まれた、ちいさな私。なんて可愛いの。今はこんなに成長している。』
ママの心が少しでも軽くなって前向きになれば。そんな思いを抱いています。
実際に頂いたメッセージをご紹介します。
『ニューボーンフォトの撮影を励みに、出産を頑張る事ができました』
『赤ちゃんを迎えた生活は正直、忙し過ぎて可愛いと思う余裕すらありませんでした。でもニューボーンフォトを見返して、こんなに可愛かったんだと改めて思いました。辛い時は見返しています。本当に撮影して良かった。』
赤ちゃんにとっても、大きなプレゼントとなります。
ご家族に歓迎され、愛された記録の1ページです。
将来、人生の途中で困難に出会った時、写真を見返して、原点に戻れるような、力が湧き出るような。それがニューボーンフォトのもうひとつの魅力だと思います。
『ご家族様と赤ちゃんの優しい思い出』になるように心がけています。
ニューボーンフォトが赤ちゃんを中心に準備され、実施されることが何よりも大切です。
授乳のタイミングに合わせて撮影をスタートし、赤ちゃんが穏やかに過ごしている可愛い姿を切り撮ります。
不自然な体勢をさせられているような写真ではなく、ありのままの可愛い姿こそが、未来の赤ちゃんへの大きなプレゼントになると考えています。
03◆ニューボーンフォトに対する世間の声
残念ながら、このような言葉をよく目にします。
・窮屈そうで可哀そう
・不自然な恰好させられて可哀そう
・親の自己満足じゃね?
・赤ちゃんをおもちゃみたいにしている
・赤ちゃん本来の可愛さや個性が感じられない
・花を手向けられて・・・怖い!死んでるみたい!
・危険じゃないの?
赤ちゃんの美しさ(柔軟性・曲線など)を求め過ぎた写真が増えているから、このような意見が出てくるのです。
赤ちゃんのポージングについては、のちに触れますが、赤ちゃんにストレスをかけずに撮影することが安心・安全に繋がります。
赤ちゃんは苦しくても痛くても、大人に上手に伝えることが出来ません。
赤ちゃんの安全安心と人権を守って撮影に臨むべきと考えています。
04◆ニューボーンフォト撮影のカメラマンに求められることとは
ニューボーンフォトは、特殊な撮影です。
撮影技術だけではなく、日本人新生児の心と体について正しく理解し、赤ちゃんとの接し方を理解し、赤ちゃんからのサインを逃さない感性を磨くこと、そして行動できることが大切です。
ニューボーンフォトは命と向き合う撮影です。
カメラマンは正しい知識を身につけ、赤ちゃんの人権を守って頂きたいと思います。
05◆新生児の特徴を理解した撮影を
新生児は、想像以上に繊細で未熟です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、お腹の中で感じていた重力の6倍に耐えているのです。
赤ちゃんは、毎日必死に生きているのです。
赤ちゃんは日に日に成長して、内臓や筋肉などの成長を経て、出来る事が少しずつ増えていきます。
赤ちゃんには体力がありません。授乳の途中で寝てしまうことがあるのも、体力が無い証拠です。
赤ちゃんは普段、泣いたり、顔を歪めたり、手をぎゅっと握ったり、体を反らせたりして、不快を知らせます。
でも呼吸しづらい不自然なポーズ中は体力の限界がすぐに訪れます。
赤ちゃんは寝たような状態になります。しかし心地よい状態ではありません。
日本人はストレスを感じやすいにも関わらず、我慢をしてしまう特徴があります。
赤ちゃんの記憶は、数週間保持されます。大人になって思い出せるのは、3歳以降の記憶と言われています。
新生児期の記憶は失われても、心のしこりはいつまでも残るということを忘れてはいけません。
『三つ子の魂百まで』 科学的にも証明された、この言葉をご存知ですか。
幼い頃に培われてきた心は、一生の土台となるのです。
小さなこどもが、苦しい・辛い経験をしてしまったら、それに気づき、心のしこりを排除し、優しく寄り添う大人が居ることはとても大切です。
心のしこりを残したまま成長するお子様の未来を想像してみてください。
大人の思惑で型にはめるのではなく、ありのままを愛することを大切にしてもらいたいです。
赤ちゃんはそこにいるだけで、可愛いです。笑ったりしませんが、心の発達は始まっているのです。
06◆赤ちゃんへのお声かけ
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ言葉も判りませんし、視力もまだ良くありません。
それでも五感を使って色々な情報を得ながら、ものすごいスピードで成長している繊細な時期です。大切に接してあげてください。
特にオムツ交換やお着換え、沐浴など、赤ちゃんのケアには細心の注意を払い、たっぷりの時間と愛情をかけて行ってあげてくださいね。
赤ちゃんの心は十分に満たされ、ママと赤ちゃんの間には安定した信頼関係が築かれていきます。
また、『今から抱っこするね』とか『今からオムツを取り替えようね』と
今から起こることをしっかり伝えてあげることはとても大切です。
これは、ご家族はもちろん、ニューボーンフォトを行うカメラマンもしっかりと赤ちゃんにお声かけをしてください。
どんなに小さな赤ちゃんでも、だんだんと見通しを持つ力がついていきます。
見通しを持てることの大切さは、大人の生活に置き換えて考えてみればすぐ分かります。
いつも、何が起こるかわからない事だらけで過ごしていたら、不安で落ち着いていられませんよね。
『今から~~しますよ』というお声かけで、赤ちゃんは安心して過ごせるようになっていくのです。
もしも自分が赤ちゃんだったら、と想像してみてください。
突然大人がやって来て、体をひょいと抱き上げられたとします。
びっくりしたり、怒りたくなったり、しませんか?
赤ちゃんにそっと近づき、赤ちゃんの目を見て、『今から抱っこするね』と優しく声をかけて、注意を払いながら抱き上げてください。
赤ちゃんを物のようにひょいと抱き上げたり、泣いているからおしゃぶりを口に入れて黙らせたり、自分だったらどう思うかな?と考えてみてくださいね。
赤ちゃんの気持ちをよく考えましょう。赤ちゃんの尊厳を守りましょう。
07◆赤ちゃんの外出はいつから?
新生児(生後28日まで)は外出を避けるべきと言われています。
感染症などへの免疫力が低く、病気になりやすいからです。
外での色々な刺激、バイキンや埃、気温の変化や外出による疲れにより、新生児は簡単に体調を崩してしまいます。
一般的に、『1か月検診』がお出かけデビューになることが多いようです。
この検診までは赤ちゃんの外出を極力避けるべきと言われています。
車移動も同様に、避けたほうがよいと言われています。
外出OKが出るのは、生後2ケ月から、とも言われています。
詳しくは、産婦人科の先生にご相談してくださいね。
全国展開している、こども専用スタジオでは、
『1か月検診』を済ませた赤ちゃんから撮影可能としています。
私が撮影を行っていた、こども専用スタジオも同様でした。
ニューボーンフォトご希望のお客様も、『1か月検診』以降にご来店頂くことを徹底していました。
スタジオには埃がいっぱいです。
ドライフラワーや生花を使用して撮影する方もいます。
のちに触れますが、これは新生児にとってリスクのある環境です。
生後1か月以前にニューボーンフォト撮影をご希望される場合は、ご自宅への出張カメラマンに依頼するのが安全です。
ママも出産という大役を務め、体調はまだまだ戻っていない大変な時期。ご自宅に出張撮影することで、安心して撮影に臨んで頂くことが出来ます。
08◆なぜ寝ている写真なの?
ニューボーンフォトは寝ている写真が多いですよね。
なぜでしょう?
ポーズを作るのに、起きていると出来ない事があるため
と説明するカメラマンが多いようです。
私は、赤ちゃんがリラックスした状態で撮影させて頂きたいため、
事前の準備について詳しくご案内しています。
またご依頼頂いたママにも、とても安心して撮影に臨んで頂くことが出来ています。
新生児の睡眠時間は15~20時間と長いため、寝ている姿のほうが自然ではあります。でもお客様によっては、起きている写真でも良いと考える方もいらっしゃいます。
お客様の心に寄り添い、赤ちゃんがリラックスした状態で、むやみに時間をかけず安全に撮影することが大切だと考えています。
起きていても寝ていても安定する、仰向けで可愛く撮影することが、何より一番の安全です。
09◆おくるみについて
そもそも、何でおくるみをするのでしょう?
赤ちゃんがママのお腹の中にいた時は、背中を丸めて膝を曲げた姿勢(Cの形)をしています。
おくるみはそれと同じ姿勢にしてあげることができる、とても安心するポーズです。
優しさをもって丁寧に巻いてあげることが重要です。
赤ちゃんをより小さく丸く可愛く見せるために、きつく包むカメラマンがいます。
『お腹の中にいた時は、ぎゅーっとなっていたから、安心して寝てくれます』と説明しているのですが、程度が問題となります。
お腹の中にいた時の環境と、生まれた環境は大きく違うからです。
・お腹の中の重力は月と同じくらい。生まれたら、その6倍の重力となります。
・生まれてからは肺呼吸が始まっています。
・生まれてからは消化器官が動いています。
この状況で、むやみにきつく巻くと、赤ちゃんがとても苦しい状態に陥ります。
きつく巻いた時のリスクは、以下の通りです。
❌血液循環の悪化
❌呼吸器系への悪影響
❌消化器系への悪影響
❌心に与えるストレス など
◆ニューボーンフォトに対する世間の声
でもご紹介しましたが、おくるみにきつく小さく包まれた赤ちゃんを見て
窮屈そうで可哀そう
という声が挙がっています。
そのため、『ニューボーンフォトは撮りたいけれど、おくるみは使わないでほしい』
というご要望も承ったこともあります。
ご希望に沿えるように撮影させて頂きました。
パパママにも、赤ちゃんにも、安心して撮影に臨んで頂けるように進めることが、カメラマンの使命と考えています。
10◆撮影時のお部屋の適温は?
撮影の際、赤ちゃんは薄着になります。
そのため、室温は27℃程度が最適です。
大人にとっては暑いくらいですが、私達は季節に合った服装をしていることを忘れてはいけません。
また赤ちゃんの平熱は、36.5~37.5度と、大人より高めです。
お部屋が寒いと、赤ちゃんは体が委縮して泣きもしません。
赤ちゃんにとって寒いお部屋で撮影を続けていると、低体温になる心配があります。
大きな病気に繋がってしまいます。
またお部屋が暑いと、ストレスが溜まって大泣きします。
赤ちゃんを優先にした環境を整えてあげましょう。
なお、撮影前後は感染症予防対策のため、窓を開けて換気も忘れずにお願いします。
11◆『赤ちゃんの肌がカサカサです!』
ニューボーンフォトを撮影する頃の赤ちゃんは、お肌の皮むけが目立つ場合もあります。
これは何故起きるのでしょう。
ママのお腹の中では潤い100%でしたが、生まれてきて外気に触れることでカサツキが出てきます。
1か月までには、綺麗にプルプルになります。
撮影前に慌ててクリームを塗るママもいらっしゃいますが、実際のところ、塗っても効果はあまり無いようです。
私はママに
『この時期の貴重な特徴なんですよ。ありのままを残してあげるのも、良い思い出になりますよ。』
とお声かけしています。
ママも『そうなんだ~』と安心してくださいます。
レタッチもご案内しているのですが、私の場合は、レタッチを依頼された事が殆ど無いです。
ありのままの姿で記録する。私は大賛成です。
12◆赤ちゃんの空腹とぐずり
赤ちゃんは2~3時間に1回ほどのペースで、ミルクを飲みます。
空腹な時に撮影を行おうとすれば、赤ちゃんはストレスにより泣いてしまうでしょう。
撮影のタイミングは、普段の生活リズムを崩さないように、予めご家族様とご相談のうえ進めることが大切です。
ミルクを飲み、ゲップも出してもらい、20分ほど休憩を済ませた頃から始めるのが良いとされています。
新生児の胃はとっくりのような形をしていて、胃の中のものが逆流しやすいのです。消化器系の機能も未熟です。
もし撮影の準備中にミルクを吐いてしまった時は、表情をよく見てあげてください。
顔色も良く、表情も良ければ、問題ありません。
ただし、しばらくの間は落ち着くまで、静かにゆっくりと待ちましょう。
赤ちゃんのぐずりの原因は、空腹のほか、以下のようなことが挙げられます。
肉体的原因:暑い、オムツの汚れ、痛みや痒みなど
精神的原因:子宮の中から外への生活へ上手に適応出来ていないため
肉体的原因は、赤ちゃんの様子をしっかりと見てあげることで、解消できます。
しかし精神的原因については、赤ちゃんの知識をしっかりと理解していないといけません。
例えば、赤ちゃんは眠たくても、上手に眠ることが出来ない事もあります。
赤ちゃんの心に寄り添い、優しく向き合えることが大切です。
赤ちゃんのストレス状態に見られる症状は、以下のようなものがあります。
・ぐったりしている
・呼吸が不安定(浅い・不規則)
・苦しそうな表情
・体を反り返そうとする
・かたくなになる
・手を握り締める
赤ちゃんのサインを逃さず受け止めましょう。
ポージングのため無理矢理ミルクを与えて眠らせたり、おしゃぶりを口に押し込んだりすることは、赤ちゃんファーストの行動ではありません。
13◆『母子一個体』とは

赤ちゃんがにっこりしていますね。天使の微笑とも言われます。
嬉しくて笑っているわけではなく、反射的に起こるものです。
でも、こんなに可愛いお顔を見ると嬉しくなりますよね。
心理学では「母子一個体」という表現があります。
ママがこの微笑をみて嬉しく感じるとき、赤ちゃんも嬉しいのです。
10か月ママの胎内にいたのですから、ママへの特別な愛着があるのです。
ではママがとても不安になったり、ドキドキ緊張していたとしたら、どうでしょう。
赤ちゃんもご機嫌が悪くなってしまう事があるんです。
すごいですね。ママと赤ちゃんは、心理的に繋がっているのです。
これは生後3~4か月頃まで続くと言われていて、人生においてとても大切なことなのです。
でもしばしば、赤ちゃんのサインを見逃してしまうことも。
赤ちゃんが撮影のため苦しいポーズを強いられて眠っているような姿であったとします。
ストレスに耐え切れず、感情を出せない状態になっている赤ちゃんに、ママが気付いてあげられなかったら、
赤ちゃんはどう思うでしょうか。
心の歪が生じませんように。
いつも赤ちゃんとママの心は、「母子一個体」であることを願います。
14◆赤ちゃんの安全なポージングについて
赤ちゃんはこの世に誕生して、産声をあげる時、肺呼吸が始まります。
心肺機能は急速に発達していきますが、新生児期はまだまだ注意が必要です。
赤ちゃんのポージングの際に気を付けなければいけない大事なこと。
それは、まず胸を圧迫しないこと。
そして、血液循環を妨げないことです。
身体を支える面は柔らかく、安定できるようにしましょう。
左右対称の形か、それに近い形にしましょう。
原始反射が優勢なときなので、その反射の動きに気をつけましょう。
顔色、機嫌などの状態に十分配慮しましょう。
そして当然のことですが、赤ちゃんが自ら出来ない、不自然なポーズは行わないようにしましょう。
不自然なポーズとは、具体的に言いますと、頬杖やうつ伏せ、ポテトサックポーズ、首を極端に曲げた体勢などです。
不自然なポーズを大人の手で強制的に行うことは、赤ちゃんの体・知能・心の健常な発達段階を妨げる行為となります。
ニューボーンフォト撮影の間だけだから、と安易に考えてはいけません。
赤ちゃんを一人の人間として、尊重しましょう。
大切に接してくださいね。
15◆頬杖ポーズのリスクについて
SNSでよく見かける頬杖ポーズ。海外から撮影技法が入ってきました。
この技法を日本人カメラマン向けに講座で教えている方、実践している方が沢山います。(合成です)
赤ちゃんが自ら出来ない不自然なポーズを大人の手で強制的に行うことは、赤ちゃんの体・知能・心の健常な発達段階を妨げる可能性があります。
●お腹や胸が圧迫されると泣きたくても声が出せないほど苦しい
大きな声を出すための深い呼吸が出来ません。
せいぜい、顔を歪めたり手をぎゅっと握り締めるくらいが精一杯です。
●大きなストレスを感じて赤ちゃんは『ひきこもり』を起こしてしまう
寝ているように見えますが、助けを求めることが出来ない状態に陥り、気を失っているのです。
●撮影のために頭を持ってはいけません
新生児の脳は、生まれてから2歳頃まで急速に発達していきます。
生後6か月頃までは、それまでの2倍の大きさに、更に2歳頃までは、またその2倍の大きさに成長します。
脳の急速な成長に合わせて、脳頭蓋も成長していくわけです。
大人の頭蓋骨とは違って、何枚かの骨に分かれています。柔らかい脳の表面にまるで島のように浮いているような状態です。徐々に離れている骨同士がくっついて1つの骨になっていきます。
急速な脳の成長が始まったばかりで、その脳を守る脳頭蓋も未熟です。
撮影を行う新生児期は、頭蓋骨には沢山の隙間があり、またそれらは軟骨状態です。
頭を持つことは脳への負担が懸念されます。
●股関節脱臼の恐れがあります
体の柔らかい時期に撮影をするのですが、それでも個人差があります。
見分けが難しいため、治療が遅れると歩行に影響を及ぼす可能性があります。
●裸での撮影は低体温になる恐れがあり、将来、精神疾患を起こす可能性があります。
アメリカにおける思春期の精神疾患者が増減傾向にあることは、
ニューボーンフォトでの影響と紐づけることは大変難しいです。
日本においても、赤ちゃんの成長過程に何か起きたとしても、
ニューボーンフォトでのストレスと紐づけることは難しいでしょう。
だからと言って、生まれたばかりの繊細な赤ちゃんに不自然なポーズを行い、
苦しい思いをさせる行為は誰のためにもならないと思いませんか。
以下の動画を、赤ちゃんの気持ちになってご覧になってみてください。
https://www.youtube.com/watch?v=G84u55-qr6o&list=PLk23UnOM1e3DUiIPKtH6QuG9oxIBtlC3O&index=22
自分から頬杖で頭を支えるような姿勢が出来るのは、早くても2歳以降です。
16◆ポテトサックポーズのリスクについて
おくるみを固く二重に巻き、体をより小さく丸く見せ、雪だるまのように立たせて撮影するスタイルのことを言います。
酷いケースでは、おくるみを巻いた体の大きさが頭の大きさとほぼ同じくらいになっています。
『お腹の中にいたときはギューっとなっていたので、大丈夫。よく寝てくれますよ。』と説明するカメラマンが居ますが、これは大きな間違いです。
お腹の中にいた時は月と同じ重力でした。生まれてからは、その6倍の重力の世界で生きています。また日に日に驚くべき速さで体は成長しています。
その状況において、このスタイルにした場合を考えてみましょう。
赤ちゃんの頭の重さは約1kg。(体重の1/3)
もし大人がこれを体感するとしたら、どうなるでしょうか。
あぐらをかいて座った状態で、体をぐるぐる巻きにされたと想定しましょう。
胸からお腹の辺りは必要以上にきつく巻かれて、息苦しい状態です。
(静かにしていても、助けを求めることすら出来ない苦しい状態です)
体重45kgの大人の頭は、約4.5kg(体重の10%)
10.5kgの重りを頭に乗せれば、合計15kgになり、体重の1/3の負荷となります。
どんな状態か想像してみてください。
赤ちゃんは手も足も動かせません。
苦しい状態でも大人に知らせることすら出来ません。
眠ったような状態になります。
赤ちゃんの気持ちになって、考えてみてください。
17◆うつ伏せポーズのリスクについて
赤ちゃんの気道(口から肺への空気の通り道)は未発達で、とても細く柔らかいのです。
また腹式呼吸をしている胸部を圧迫するポーズは、呼吸に悪影響を及ぼします。
泣きたくても大声を出せない体勢です。
更にお顔を見せるため、首を極端に曲げてしまうことは、心肺機能にもリスクがあります。
厚生労働省は1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょうと指導しています。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の発症を抑えることを目的としています。SIDSのリスクを減らすとはいえ、5~6ケ月の赤ちゃんが自らうつ伏せ寝をした場合、ママの見守りのもとであれば、わざわざあおむけにしなくても良いとも言われています。また、なかなか寝れない赤ちゃんをうつ伏せにしたら、安定してよく寝るという話も聞いたことがあります。
でも、生後2週間程の新生児を、撮影のためにうつ伏せにすることには抵抗を感じます。
医療従事者のエキスパート多数の方に、SNSで見られるうつ伏せポーズ(バムアップ、サイドポーズ、チンオンハンズ、タコスポーズ)をご覧頂き、ご意見を伺いました。頂いたご意見の中で目立ったキーワードは
『無理なうつ伏せ』『不自然』『うつぶせとは違う』『違和感』でした。
その理由は明らかです。
・顔をよく見えるように首に負担をかけるような無理なポージングをさせている
・体を美しい曲線に見せるために赤ちゃんの体の状態を配慮していない
ニューボーンフォト撮影の際、助産師さんがカメラマンに同行し、うつ伏せのポージングを行うのであれば安全なのかもしれません。でも助産師さん同行でも、『よく寝ていないと出来ないポーズです』と言われています。つまり起きていれば、赤ちゃんは嫌がるということです。折角寝ている時に、目を覚まさないからと言って、不自然なポーズをさせることを皆さんはどう思われるでしょうか?
首には延髄、神経が通っていて、それを支える骨格や筋力がありません。首を上下、左右、斜めなど極端な角度にすることは赤ちゃんの体にリスクがあるのです。
また綺麗に纏められた足先にチアノーゼを起こしている写真も、SNSでしばしば見受けられました。
すぐにポージングを止めて、足先を温める必要がある状態です。
ちなみに
首が座るのは、生後3ケ月頃。
寝がえりが出来るようになるのは、生後5~6ケ月頃。ママの見守りが必要です。
寝がえり返り(寝がえりをしてから、また元の状態に戻ること)は、寝がえりが出来てから1~2ケ月後 (生後7~8ケ月)です。
18◆不自然なポージングを教えているスクールや助産師カメラマンについて考える
フォトジェニックを重視した不自然なポーズを教えている人・団体は、今、沢山いらっしゃいます。
学んだ通りにすれば安全と思って、一生懸命練習を重ね、撮影している方々のことも知っています。
でも、こう考えてみてください。
もし自分がこれから歯医者に通うことになったとします。
お医者さんはどこがいいかなと、クチコミなど頼りに探します。
何故かといえば、歯医者さんは皆さんプロですが、残念ながら患者さんに不満を抱かれてしまう先生もいます。
先生と言われる方が、皆全員、万人に優秀な先生だと賞賛されるとは限りません。
私の知人に、産婦人科・小児科・新生児科の専門病院に勤務している、新生児室の部長がいます。
大きな病院ですので、同じ分野の先生は沢山いらっしゃいます。
同じ病院ではありますが、治療方針は先生によって様々だとお話されていました。
プロの中でも、何を信じて、どう実行していくかは様々です。
何を大事に考えるか、優先順位は違うのですね。
助産師カメラマンについても、同じことが言えるでしょう。
私は、日本助産師会に電話で相談したことがあります。
ニューボーンフォトというもの自体をご存知なかったそうです。
日本助産師会に加盟している方には、このようなこと(無理なポージング)をする常識外れな者は居ないとハッキリ仰っていました。
私は、頬杖・うつ伏せ・ポテトサックポーズを行いません。
赤ちゃんの心と体にリスクあるからです。
お客様からご希望があった時は、丁寧に理由をお伝えし、お断りしています。
理由をお話すれば、お客様は理解して頂けます。
『SNSでよく見かけたので、やってみたかったのですが、うにさんにお話を伺って、やらなくて本当に良かったと思います。』とレビューを頂いたこともあります。
怖いのは、日本人新生児の正しい知識を知らずに、これらのポーズを行うことです。
皆さん口を揃えて、安全に撮影していると仰っています。
その安全は、撮影中に赤ちゃんがバランスを失って倒れないように、といった、現場で目に見える事柄だけを指しているのだと思います。
私は、撮影現場だけの安全ではなく、
赤ちゃんのこれからの成長に関わる部分にも着目して取り組んでいきたいと考えています。
19◆撮影時間の配慮について
ジャネーの法則を知っていますか?
「主観的に記憶される年月の長さは年少者にはより長く、年長者にはより短く感じられる」現象を、心理学的に説明したものです。
ジャネーは19世紀のフランスの哲学者です。
確かに、30歳の大人が感じる1年は、1歳の子どもが感じる1年の1/30。
つまり、大人が短いと感じる時間は、子どもにとってはそうではないという事です。
生後わずか2週間の赤ちゃんが、5分間も不自然なポーズを強いられて、ストレス過多で精神的ダメージを受けていたとします。
大人の5分は、この赤ちゃんにとっては何分の体感となるのでしょうか。
156分。2時間36分に相当します。
撮影の短い間だから大丈夫、と考えないでください。
赤ちゃんの気持ちに寄り添い、大切に接するようにしたいものです。
20◆生花による健康被害について
生花やドライフラワーは農薬や化学肥料、埃や花粉により健康被害を与える可能性があります。使用を控えましょう。
綺麗な花は、大量の農薬や化学肥料、除草剤にさらされているものです。
大人でさえ、これらに敏感な方は、花屋でも冠婚葬祭の場でも、辛い思いをするそうです。
症状はすぐに起きず、ある日突然発症すると言われています。
赤ちゃんに直接触れなくても、カメラマンの手を介して影響を与える可能性があります。
花を触った手で、赤ちゃんを触ることは、とても恐ろしいことだと思います。
赤ちゃんの安全を最優先に考えた撮影を行うべきと考えています。
21◆医療従事者のご意見について
私はニューボーンフォトにおける不自然なポージングについて、およそ50人の専門家に相談をさせて頂きました。新生児についてのプロフェッショナルな方々です。
匿名希望にてお答え頂いたのは、23名。その殆どの先生はニューボーンフォト自体をご存知ありませんでした。
撮影風景の動画や、SNSで掲載されている写真をご覧頂きました。
ショックのため、驚きの声を上げた先生もいらっしゃいました。
医療従事者は、臨床実験を経て、科学的根拠がなければ『危険』と公に注意喚起は出来ません。
ご協力いただいた専門家の先生方のご意見はとても貴重なものであることを、まずお伝えします。
お答え頂いた先生のメッセージの一部をご紹介します。
『新生児に不自然な姿勢をとらせることが危険であることは医学的に明らかなので、正しい知識を広めることが必要であると考えます。』
『とても大切な問題提起だと思います。』
『好ましい撮影方法ではありません。』
『「素敵な写真」とは思えず、赤ちゃんに無理をさせていることに危惧を覚えます。』
『写真家の方々が「専門家」と言われれば、そのように思ってお任せしてしまうのだと思います。とても問題だと思います。』
『なぜ頬杖写真が危険なのかわからない、赤ちゃんの安全な支え方ができない人達が、新生児を扱っていることはとても怖いことです。』
私は、私の考え(不自然なポーズは赤ちゃんにリスクがある)に自信を持ちました。
私はニューボーンフォトを撮影し続ける限り、ご家族様の気持ちに寄り添いつつ、赤ちゃんファーストの撮影を続けていきます。
そして後進の育成に全力を注ぎ、信頼できるカメラマンの輪を広げていきます。
1人でも多くの方に、この想いが伝わりますように、活動を進めて参ります。